日経サイエンス  2010年8月号

米国の高速鉄道計画

S. F. ブラウン(SCIENTIFIC AMERICAN)

 米国には,日本の新幹線やフランスのTGVに相当する高速旅客鉄道がない。ボストンとワシントンを結ぶアムトラックの平均速度は時速112kmで,新幹線に比べるとはるかに遅い。

 

 すっかり出遅れた感のある米国の高速鉄道整備計画だが,最近,ついに実現に向けて動き出した。オバマ政権は今年,景気対策の一貫として,カリフォルニアのロサンゼルス~サンフランシスコ間や,フロリダのタンパからオーランド間などの全米の高速鉄道路線の整備に80億ドルの支出を決めた。カリフォルニア州は住民投票で,90億ドルの州債を発行し,同州を縦断するこの路線の建設に着工することを承認した。

 

 各地の高速鉄道計画関係者の注目を集めているのが,磁気浮上(マグレブ)列車だ。米国には山が多く,例えばロサンゼルスとラスベガスを結ぶ路線では,最大7%の勾配を登る必要がある。レールと車輪が接触していない磁気浮上列車は勾配に強く,トンネルを掘る必要が少ないことで注目されている。また摩滅も少ないので保線にかかるコストが少なくてすむとの期待もある。

 

 すでに上海では空港と市街の間で常伝導磁石を用いたドイツの技術に基づく磁気浮上列車が営業運転をしており,日本では超電導磁石を使う286kmの磁気浮上列車が,2027年の竣工を目指して開発中だ。米国では長らく航空機と車のための施設整備を優先してきたが,環境に優しい高速鉄道が再び注目を集めそうだ。

著者

Stuart F. Brown

SCIENTIFIC AMERICANの協力編集者。1984年以来,鉄道,自動車,トラック,ボート,航空機,宇宙船など,輸送機関連の記事を執筆し,米国工学連合会や米国化学会,米国電気電子学会(IEEE)で高く評価されている。

原題名

Revolutionary Rail(SCIENTIFIC AMERICAN May 2010)

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