日経サイエンス  2010年5月号

星誕生のドラマを探る

E.T.ヤング(米航空宇宙局/ドイツ航空宇宙センター)

 星はどうやって誕生するのか? これこそ天文学者が長年解明したいと願ってきた謎だ。星形成は星間空間に漂うガスと塵の巨大なガス雲から始まる。ガス雲が冷えてその密度が高まると,外向きの圧力よりも内向きの重力が勝り,自らの重力によって収縮し始める。ガス雲は収縮とともに温度が上昇し,最終的に核融合を起こして,星になる。

 

 この星形成の標準理論は,増え続ける観測事実とよく合っている。しかし,理論の完成というにはまだ程遠い。標準理論ではいくつかの重要な事実を説明できないからだ。

 

 例えば,大質量星の形成を説明できない。大質量星は寿命が尽きる直前に超新星爆発を起こす。その際,重元素を多く含む物質が星間空間に戻され,次の世代の星の材料となる。また,爆発による衝撃波がガス雲の収縮を引き起こし,新たな星の誕生を促している。銀河の進化に大質量星は欠かせない存在だ。しかし,標準理論によると,星は太陽質量の20倍を超えると,自らの放射でその母体であるガス雲を吹き飛ばす。その結果,星は大質量を獲得する前に,自らの成長をストップさせてしまうのだ。

 

 このような標準理論の欠点に焦点を当てることは緊急の課題だ。星形成は,銀河の起源から惑星の形成に至るまで天文学全般の基礎だからだ。昨年打ち上げられたハーシェル宇宙望遠鏡と,航空機に搭載された遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)は,星形成領域の観測に適した遠赤外線とサブミリ波の波長での観測を予定している。チリにはアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)が建設中だ。こうした観測機器が,星形成にまつわる諸問題を解決するヒントを私たちに与えてくれるはずだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス187 「宇宙をひらく望遠鏡」

再録:別冊日経サイエンス200「系外惑星と銀河」

著者

Erick T. Young

10歳のときにボール紙の筒を使って望遠鏡を作り,天文学者としての人生をスタートさせた。現在,米航空宇宙局 とドイツ航空宇宙センターの共同による遠赤外線天文学成層圏天文台の科学ミッションおよび運用のディレクター。1978年~2009年にアリゾナ大学スチュワード天文台に所属。赤外線天文衛星IRASや赤外線宇宙天文台,ハッブル宇宙望遠鏡のNICMOSカメラや広視野カメラ3,スピッツァー宇宙望遠鏡,次世代のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡など宇宙空間での赤外線観測機器開発チームに属している。

原題名

Cloudy with a Chance of Stars(SCIENTIFIC AMERICAN February 2010)

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