日経サイエンス  2009年10月号

草から作るガソリン

G. W. ヒューバー(マサチューセッツ大学アマースト校) B. E. デール(ミシガン州立大学)

 自動車やジェット機を動かす石油代替燃料として,バイオ燃料が注目されている。バイオ燃料はどんな植物(あるいは植物だったもの)からでも製造できるが,現在は主にトウモロコシの実や大豆,サトウキビから作られている。植物は成長の過程で二酸化炭素を吸収するため,バイオ燃料は環境に優しい燃料だ。

 

 トウモロコシの実から燃料を作るのはそれほど難しくはない。単糖に分解した後,発酵させればよい。しかし,トウモロコシの栽培・収穫・加工過程における二酸化炭素の総排出量を算出した結果,トウモロコシ由来のバイオ燃料は私たちが期待するほど環境にフレンドリーでないことが判明した。また,トウモロコシは食料であり,家畜の飼料としても使われているため,燃料の原料としての需要が高まると食料価格が高騰する恐れがある(昨年の食料価格の高騰の一因とされている)。

 

 こうした落とし穴を回避できるとされているのが,セルロース系バイオ燃料「グラソリン」だ。間伐材や雑草,トウモロコシの茎や稲わらといった植物の食べられない部分を原料として燃料を生産できる。しかし,植物を形作る成分であるセルロースは,トウモロコシの実のように簡単には糖に分解しない。現在,発酵可能な糖を高収率・高濃度で生産でき,かつ適度な初期コストで実施できる方法が研究されている。

 

 生産技術としては未熟ながらも,グラソリンへの期待は大きい。セルロース系バイオマスは原油よりも安価なので,産業が立ち上がってしまえばコストを抑えることができる。また,グラソリンは国内で生産できるので,国家安全保障上も大きな意味を持っている。しかも化石燃料やその派生燃料より環境に優しい。

 

 日本では建築廃材を原料にバイオエタノールの商業生産が始まった。“グラソリンの時代”はすぐそこまで来ている。

著者

George W. Huber / Bruce E. Dale

ヒューバーはマサチューセッツ大学アマースト校の化学工学者。アネロテック社の設立者で,多くの石油・バイオ燃料関連企業の非常勤コンサルタントも務める。デールはミシガン州立大学化学工学科教授で,前学科長。グレートレイクスバイオエネルギー研究センター(http://greatlakesbioenergy.org)のリーダーの1人で,バイオ燃料関連企業の非常勤コンサルタントも務める。

原題名

Grassoline at the Pump(SCIENTIFIC AMERICAN July 2009)

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