日経サイエンス  2009年6月号

温暖化の究極の解決策!? 地球に日よけ

R. クンジグ(サイエンスライター)

 二酸化炭素(CO2)の排出量は,国際的な話し合いや協定が長年にわたって積み重ねられてきたにもかかわらず,依然として増え続けている。世界各地の平均気温は上がり,極付近の氷はどんどん解けている。海面上昇による浸水やハリケーン,干ばつなど温暖化の悪影響と思われるニュースを耳にする回数も増えた。時間はない。すぐに温暖化をストップする方法はないのか? 即効性という観点から,“日よけ”を作って地球に降り注ぐ太陽光の量を減らす方法がまじめに検討されている。

 

 例えば,成層圏に硫酸塩の雲を作り出す方法。火山噴火の後,周辺の平均気温が下がることが知られている。噴火で二酸化硫黄のガスが成層圏に入り込み,酸素や水と反応してできた硫酸塩の雲が太陽光を散乱させるためだ。

 

 化石燃料の燃焼によって毎年5500万トンの二酸化硫黄が低層大気中に放出されている。これを成層圏まで持っていければ,火山噴火のときのように硫酸塩の雲ができ,気温の上昇を抑えられるだろう。この方法は日よけのアイデアの中でも最も費用がかからず確実な方法だ。他にも,大気中に海水を振りまいて海上の雲の輝度を増す方法や,宇宙に日よけを作る方法などが考えられている。

 

 こうした方法でどの程度の効果が期待できるか,また地球を冷やす以外にどのような副作用があるかは定かでない。二酸化硫黄を成層圏に注入すれば,雨が酸性化したり,オゾン層が破壊されたりする危険性がある。また,CO2の増加が引き起こす問題は温暖化だけではないため,日よけだけではCO2問題を完全に解決できない。だが,カーボンニュートラルなエネルギー源に移行するまでの時間稼ぎとして,日よけの方法は検討に値する選択肢の1つではあると一部の研究者は考えている。ハーバード大学の地球物理学者シュラグは言う。「グリーンランドの氷床が明日にも崩れるとしたら,そしてあなたが米国大統領だったら,一体どうする? 選択肢は他にない。」

 

 

再録:別冊日経サイエンス198「激変する気候」

著者

Robert Kunzig

海洋科学と地球気候を専門とするフリーのサイエンスライター。『Mapping the Deep: The Extraordinary Story of Ocean Science』で2001年の「科学書籍のためのアベンティス賞」を受賞した。最近ではブレッカー(Wallace S. Broecker)と共同で『Fixing Climate: What Past Climate Changes Reveal about the Current Threat ── and How to Counter It』を執筆。アラバマ州バーミンガムとフランスのディジョンを行き来しながら暮らしている。

原題名

A Sunshade for Planet Earth(SCIENTIFIC AMERICAN November 2008)

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