日経サイエンス  2009年4月号

特集:進化する進化論

進化の未来

進化の未来

P. ウォード(ワシントン大学)

 私たちホモ・サピエンスは果てしなく長い時間をかけて今の姿に進化してきた。これまでの人類は加速的に進化してきた傾向があり,最近の研究によると,過去1万年間の進化の速度は先行人類が猿の祖先から分岐した後のどんな時期よりも100倍速いという。では人類が今後も進化を続け,環境的・社会的変化を生き延びたなら数千年後はどんな姿になっているだろうか?

 これまで人類の進化を導いてきたのは自然選択だ。厳しい自然環境への適応,天敵動物の存在,農業の発達や都市化に伴う衛生状態や食べ物の変化,新たな疫病の流行などが大きく影響しただろう。だが科学技術が発達した現代では状況はこれまでと違う。かつての不治の病も治療法が次々と確立されてきたし,乳幼児の生存率も上がっている。もはや人間の生死を決めるのは遺伝子よりも文化によるところが大きくなっている。

 科学が発達することによって自然選択の影響が小さくなり,遺伝的,身体的進化は終わり,今後は文化面のみが進化すると考える人もいるだろう。だがその科学技術は今後の人類の進化の方向を決めるほどの力をもっている。遺伝子操作を重ねていった結果,新たな人類が誕生するかもしれないし,コンピューターや機械で脳や体を補強するようになるかもしれない。こうしたダーウィンの進化論にあてはまらない進化が起こる可能性がある。ここでは楽観的なものから悲観的なものまで人類のさまざまな未来を予測する。

著者

Peter Ward

ワシントン大学(シアトル)生物学科と地球・宇宙科学部門教授。古生物学,生物学,宇宙生物学の分野で30年以上活躍している。2001年から06年にかけてNASA宇宙生物学研究所と提携,40人以上の研究チームを率いた。地球への隕石衝突と大量絶滅が果たした役割に関する研究で知られる。最近,11歳の息子と大型鉄道模型を使って白亜紀後期の世界を復元した。同スケールの恐竜をたくさん並べ,機関車を暴走させて恐竜を絶滅に追いやった。

原題名

What Will Become of Homo Sapiens?(SCIENTIFIC AMERICAN January 2009)

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