日経サイエンス
日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。

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     エチオピア北東部,地球で最も乾いた砂漠の1つが,新たな海になる道を歩んでいる。アフリカ大陸のうち「アファール盆地」と呼ばれるこの地域は2方向に引き裂かれて,地殻が徐々に薄くなっている。盆地の下の地殻は厚みがたった20kmで,当初の半分以下だ。そして,盆地の一部は標高が海面下100mに満たない低地。東側の低い丘陵地が,紅海の水が盆地に流れ込むのをかろうじて防いでいる。
     高温の地球内部が近くまで迫っているため,地震と火山,熱水域のダイナミックな景観が生まれた。そうしたプロセスを理解したいと望む私のような人間にとって,アファール盆地はまさにパラダイスだ。しかし,科学者を含め,アファール盆地に足を踏み入れたよそ者はほとんどいない。日中の気温は夏場だと48℃に達するし,年間を通じて雨はほとんど降らない。しかし,それらよりもはるかに大きな危険にこの地は直面している。始末に負えない地政学的な抗争,つまりエチオピアと隣国エリトリアとの戦争が,こうした自然の困難とあいまって,アファールをまったく住めない場所にしている。
     この土地があと100万年,横に延び続けて沈降すると,紅海から大量の水が流れ込んで,アファールは新しい海の底になると地質学者は予想している。いまのところ,この未来の海底は灼熱の地で,溶岩が植物を窒息させ,地獄の熱が酸を煮えたぎらせ,奇怪な地形が毒の煙を噴き出している。そして,古代に紅海から流れ込んだ水が残した塩の遺産が,アファールの遊牧民に貴重な輸出品を提供している。
     新たな海の形成という地球物理学的な誕生劇の舞台を,写真と記事でリポートする。

    Keyword
    エルタ・アレ/中央海嶺/溶岩湖/ダロール・クレーター/ソルトマッシュルーム
    著者
    Eitan Haddok
    パリを拠点とする写真家・リポーターで,地球科学と環境,特に乾燥地の生態系を専門とする。1994年にテルアビブ大学で地球物理学と惑星科学の修士号を取得。その前の9年間は環境エンジニアとして働いたが,地球と写真という彼の熱愛する2つを結びつけ,それを仕事にした。地質学的ドラマを追ってアイスランドに赴き,地球温暖化が現地の火山活動を活発化させている可能性を報告した。
    原題名
    Birth of an Ocean(SCIENTIFIC AMERICAN October 2008)

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