日経サイエンス  2008年10月号

核燃料リサイクルを再考する

F. N. フォン・ヒッペル(プリンストン大学)

 昨今,天然ガスや原油の価格がうなぎ登りに高騰し,化石燃料の燃焼による温暖化ガスの排出に対する人々の反対もますます強くなっている。そんな中,米国では再び原子力発電に注目が集まっている。だが,解決しなければならない問題が山積みだ。現在,使用済み燃料を貯蔵する冷却プールはほぼ満杯になり,ユッカマウンテンの放射性廃棄物処分場計画も行き詰っている。

 

 こうした状況に対応するために,米エネルギー省は核燃料サイクル方式の導入を検討している。使用済み燃料からプルトニウムなどを回収して新しい燃料として再利用すれば,数千年も厳重に保管しなければならない廃棄物の量を減らせるというのだ。

 

 しかし,この方法にも問題がある。中でも最大の問題は核拡散の危険性だ。使用済み燃料は致命的な強度の放射線を発するため,テロリストに盗まれる危険性は低い。一方,回収プルトニウムは放射性が弱く,その危険性が高まる。しかも,プルトニウムをほんの数kg盗み出すことに成功すれば,核爆弾を製造できてしまうのだ。従来のワンス・スルー方式を続ける方が現実的で安全と著者は考える。

 

 となると,問題は再び「行き場がなくなりつつある使用済み燃料をどうするか」に戻る。著者は廃棄物処分場ができるまで「乾式キャスク」に貯蔵することを提案している。原子炉から取り出して20年ほど経った使用済み燃料を分厚いコンクリートで覆われた金属製容器に保管すれば現状のリスクを上回ることはないという。

著者

Frank N. von Hippel

核物理学者であり,プリンストン大学科学・グローバル安全保障プログラムにおける公共・国際関係学教授。1993年と1994年には米大統領府の科学技術政策局国家安全保障担当長官補佐を務めた。2006年から核物質に関する国際パネルの副主査を務めている。これまでもSCIENTIFIC AMERICANに著者・共著者として数編の論文を寄稿している。

原題名

Rethinking Nuclear Fuel Recycling(SCIENTIFIC AMERICAN May 2008)

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