日経サイエンス  2008年9月号

南硫黄島探検記

中島林彦(編集部) 協力:南硫黄島自然環境調査隊

 「南硫黄島(みなみいおうとう)調査から1年過ぎたが,そのときの写真や映像を見ると,今も気持ちが高まる。それは調査というよりもまさしく探検だった」と調査隊長で植物学者の加藤英寿(かとう・ひでとし)は振り返る。小笠原諸島に属する南硫黄島は周囲を断崖に囲まれ,耕作に適した平地もないため,人間が定住したことがなく,今も原生の自然が残る。

 

 2007年夏,25年ぶりに調査隊が組織され,植物や鳥類,哺乳類,昆虫,陸産貝類,海洋生物などの状況が約10日間にわたって詳しく調べられた。隊は石ころだらけの海岸べりをベースキャンプとしたが,容赦なく照りつける太陽によって岩場の表面は50℃近くに達した。「テントのすぐ前は海,後ろは断崖。昼も夜も,波音に混じって落石の音が聞こえていた。ヘルメットは絶えずつけていた」と副隊長で鳥獣研究者の鈴木創(すずき・はじめ)は言う。

 

 採集された膨大な資料をもとにした研究はこれからだが,種の伝播や進化の謎を解き明かす新たな手がかりが得られると期待されている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス192 「不思議の海」

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