日経サイエンス  2008年5月号

特集:革命前夜の物理学

「その時」を待つCERN

中島林彦(編集部) 協力:近藤敬比古(高エネルギー加速器研究機構)

 スイスのジュネーブ近郊,東にモンブランなどアルプスの山々,西にジュラ山脈の峰々を望む地に,大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を擁する欧州合同原子核研究機構CERN(セルン)はある。

 

 地下100mまでエレベーターで1分。眼前にはSF映画のような風景が広がっていた。見上げるような巨大マシンがライトに照らされ,ヘルメット姿の人々がせわしなく行き来する。壁には無数のケーブルや配管が這い,至るところにある制御装置には,これまた無数とも言える赤や緑などの小さなランプが点滅している。

 

 SF映画と違うのはケーブルの1本1本,ランプの点滅の1つ1つにすべて意味があることだ。制御室を訪れると大勢の研究者が真剣にモニター画面を見つめていた。約140億年前に宇宙は誕生したが,その誕生直後の超高エネルギー世界が,早ければ2008年夏,地下に建設された4つの巨大マシンの内奥で同時に再現される。

 

 2008年2月末に訪れたCERNはLHC稼働に向け,静かな熱気に包まれていた。4つの巨大マシン(検出器)はいずれも数十カ国,数千人の研究者や技術者が参加するプロジェクト。これまで母国で準備に取り組んでいた人々が最終準備段階を迎え,続々とCERN入りしている。食堂やカフェテリアは人が渦巻き,そこかしこで議論の輪ができ,さまざまな国の言葉が行き交う。構想から四半世紀,この壮大なプロジェクトを実現させたCERN首脳4人に思いを聞いた。

協力:近藤 敬比古(こんどう・たかひこ)
高エネルギー加速器研究機構教授。専門は高エネルギー物理学。LHCの検出器ATLASの開発で中心的な役割を果たしている。

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