日経サイエンス  2008年3月号

シャドー バイオスフィア 私たちとは別の生命

P. デイビス(アリゾナ州立大学)

 生命の起源は解明されていない科学の大問題の1つだ。30年ほど前までは,生命の誕生は奇跡に近い偶然の結果で2回以上も起きたはずはなく,宇宙が広大といえども,生命の星は地球だけ,という考えが有力だった。しかし,今や状況は変わり,環境条件さえ整っていれば,生命の誕生はむしろ必然的とする説が有力になってきた。地球に似た惑星ならば,どこでも発生していてもおかしくないというのだ。

 

 2つの説のどちらが正しいのか,どうすれば確かめられるだろう?一番,直接的なのは,ほかの天体で生命を見つけることだ。だが,これはコストも時間もかかる。もっといい方法が実はある。「地球に似た惑星ならば生命が誕生する」というのなら,この母なる地球で生命の誕生が何度も起きていたとしてもいいはずだ。

 

 この地球に私たちとは起源の違う異質生命体が存在する──
一見するとバカバカしいように思えるかもしれないが,十分に可能性はある。生物の大半は肉眼では見えない微生物である上,顕微鏡で見たとしても,形だけではそれが何なのかわからないからだ。

 

 もしかすると,炭素をベースにした有機物からなる私たちとは違い,ケイ素をベースにした生物かもしれない(ケイ素は地殻で最も豊富な元素だ)。私たちが体内のエネルギー代謝などでリンを使う代わりにヒ素を使っているかもしれない。あるいは,アミノ酸やDNAが鏡像異性体からなる鏡像生物かもしれない。もし,こうした生物だとしたら,普通の生物とは競合しない代わりに,通常の微生物検出法や培養実験では見落とす可能性がある。さらに,地球上の「生物がとてもすめなさそうな場所」にだって,異質生命体ならば生息しているかもしれない。異質生命体を見つけ出そうとする研究が始まっている。

著者

Paul Davies

理論物理学者であり宇宙論研究者,宇宙生物学者。現在はアリゾナ州立大学にある,科学の「大きな謎」に挑む研究センターであるビヨンドの所長。これまでに共著を含めて27冊の本を出しており,日本で訳された一般向けの本も多い。最新作はCosmic Jackpot: Why Our Universe Is Just Right for Life (Houghton Mifflin, 2007)。

原題名

Are Aliens among Us?(SCIENTIFIC AMERICAN December 2007)

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