日経サイエンス  2007年10月号

地球温暖化の真実 IPCC第4次報告書から

W. コリンズ(カリフォルニア大学バークレー校) R. コールマン(オーストラリア気象局) J. ヘイウッド(英国気象庁) M. R. マニング(米海洋大気局) P. モート(ワシントン大学)

 最近の気候変動の主因は人間活動に伴う温暖化ガスの排出,主に化石燃料の燃焼だ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめた最新の報告書は,人間活動によって地球が温暖化している確率を90%超とした(2001年の前回報告書では66%超としていた)。気候変動の程度や,人間活動が気候変動をもたらしていることを示す重要な発見について概説する。

 

 過去10年の二酸化炭素(CO2)濃度の増加率は,継続的な大気観測が始まった1950年代以降では最も大きく,現在の濃度は産業革命以前の水準に比べて約35%高い。メタン濃度は産業革命前の約2.5倍,一酸化二窒素の濃度は同20%ほど高い。

 

 これらが確かに人間活動によるといえるのはなぜか。まず,一部の温暖化ガス(例えば多くのハロゲン炭素化合物)は自然には生じない。自然に発生しうるガスについても,人間の影響を示す2つの観測事実がある。1つは濃度に地域差があり,人口の多い北半球の陸域から主に発生していること。2つめは,同位体分析によって排出源を判別した結果,CO2増加分のほとんどが化石燃料の燃焼に由来するとわかったことだ。メタンと一酸化二窒素の増加は,農業活動と化石燃料消費による。

 

 気候に及ぼす影響は「放射強制力」という考え方に基づいて数値化される。放射強制力は,その要因によって全地球のエネルギー収支が産業革命以前に比べてどれだけ変わったかを示すものだ。IPCCが前回の報告書をまとめた2001年以降,多数のモデル研究と観測を組み合わせることによって,個々の気候変動要因が持つ放射強制力について不確実性が数値化された。この結果,人為的要因が合計でどれだけの影響をもたらすかを,しっかりと見積もれるようになった。太陽活動の変化による自然の放射強制力に比べ,人為的要因の放射強制力総計は約10倍の大きさだ。

 

 世界の気温,海面水準,北半球の冠雪面積は,細部には違いがあるものの,いずれも温暖化を示している。人間活動が正の放射強制力をもたらしてきたこと,そして気候が実際に変化してきたことは確実だ。では,両者が関連していると確かにいえるだろうか。自然の放射強制力だけを考慮した気候モデルによるシミュレーションでは,20世紀半ば以降に観測された温暖化を説明できないが,人為的要因を加えたシミュレーションは観測結果に合致する。大スケールで見た温度変化の“パターン”も,すべての放射強制力を考慮に入れた場合に,モデルと観測結果が最もよく一致する。

 

 いまや世界の気候がさらに変動を続けるのは避けがたい。しかし未来は,特に長期的未来は,私たちの行動によってかなり変わりうる。どんな規模の気候変動が生じるかは,人類が温暖化ガス排出に関して何を選択するかにかかっている。

著者

William Collins / Robert Colman / James Haywood / Martin R. Manning / Philip Mote

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2007年報告書(第4次報告書)の第1作業部会に加わった。コリンズはカリフォルニア大学バークレー校地球・惑星科学科の教授で,米国立ローレンスバークレー研究所と米国立大気研究センター(コロラド州ボールダー)の上級研究員を兼務。コールマンはオーストラリア気象局研究センター(メルボルン)で気候ダイナミクス研究グループの上級研究員を務める。ヘイウッドは英エクセターにある英国気象庁に勤務し,観測研究グループと化学・気候・生態系グループのエアロゾル研究部長。マニングは米海洋大気局(NOAA)地球システム研究所(コロラド州ボールダー)でIPCC第1作業部会サポートユニットを率いる。モートはワシントン州政府の気候学者で,ワシントン大学(シアトル)で気候影響グループの研究員と大気科学科の客員教授を務めている。

原題名

The Physical Science Behind Climate Change(SCIENTIFIC AMERICAN August 2007)

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