日経サイエンス  2007年5月号

カレーのスパイスを新薬に

G. スティックス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 副作用の少ない天然化合物をもとにした薬剤開発は以前から行われてきた。アスピリンはヤナギの樹皮から採れたものだし,抗コレステロール薬のスタチンはカビから,抗マラリア薬のアルテミシニンは漢方で知られる青蒿(せいこう,Artemiesia annua)という植物から採取された。最近では,赤ワインに含まれるレスベラトロルや魚油のオメガ3脂肪酸なども注目されている。カレーの黄色い香辛料として知られるターメリック(ウコン,鬱金)もこうした天然化合物のひとつで,インドのアーユルベーダ医学では,傷の治療や胃の病気に効く薬とされ,5000年前から用いられていた。

 

 だが,いまターメリックが注目されているのは,この伝統的な効果のためではない。最近の研究データでは,ターメリックの有効成分クルクミンには,がん細胞の増力を抑え,糖尿病,関節炎,アルツハイマー病などの慢性疾患を予防する作用があるかもしれないというのだ。毒性が低く,安価であることも魅力だ。

 

 だが一方では,使用に注意が必要であることを示す研究結果もある。クルクミンは非常に多くの生物学的経路に影響を及ぼすため,病気を助長する可能性もあり,それを示唆する実験データも出ている。米国の一部の研究機関や研究者は,動物や細胞レベルでの研究結果をもとにターメリックの使用を推奨しているが,ターメリックがアルツハイマー病やがんの薬として使えることを示すには,大規模臨床試験の結果を待たなければならない。

 

 
再録:別冊日経サイエンス237「食と健康」

原題名

Spice Healer(SCIENTIFIC AMERICAN February 2007)

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