黒い液体をたたえた黒い器の真ん中に,金色に輝く円錐形の金属の塔が立っている。じっと見ていると,あら不思議,黒い液面がゆったりと波立ったかと思うと,液面のふくらみが塔の方に向かって動き始め,黒い液体が塔に刻まれた螺旋(らせん)の溝をスルスルと登り始めた。
重力に逆らって液体が上昇すること自体が驚きだが,螺旋を登る液体は意志を持っているかのように,その液面がぐっと持ち上がり,シャープに尖ったトゲが生まれる。黒い光沢を帯びた膨大な数のトゲが,塔の螺旋を登っていくのだ。液体が塔の頂上まで達すると,ピタっと動きを止める。金色に輝いていた塔はそのとき,無数のトゲが突き出た漆黒の塔に姿を変える。
一連の動きを眺めていた人々の間からは驚きの声が上がる。これが私の最新作『モルフォタワー/螺旋の渦』だ。塔表面の質感がダイナミックに変化すること,トゲトゲの液体が螺旋を描きながら塔を登る様子から,この名前を付けた。ある文化ジャーナリストは「液体彫刻」と評した。
著者
児玉幸子(こだま・さちこ)
電気通信大学人間コミュニケーション学科助教授,メディアアーティスト。2000年から電気通信大学を拠点に磁性流体を応用したメディアアートを研究,展示活動を行ってきた。北海道大学理学部卒,筑波大学大学院芸術学研究科修了,博士(芸術学)取得。第5回文化庁メディア芸術祭インタラクティブ部門大賞,デジタルコンテンツグランプリアート部門最優秀賞,情報文化学会芸術賞。ACM







