日経サイエンス  2007年3月号

猿人ルーシーの子ども

K. ウォン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 エチオピアのアファール地方の乾燥した荒地は長い間,化石探しを行う古人類学者たちが熱い眼差しを注いできた土地だ。多くのホミニン(チンパンジーと分岐した後のヒトの系統に位置するすべての人類を指す)が発見された“故郷”だ。ここは約320万年前の人類の祖先,アウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)の「ルーシー」の骨格を産出した地として,おそらく最もよく知られている。

 

 そして,いま研究者たちはルーシーの発見地からわずか4km離れたディキカで,新たにA.アファレンシスの驚くべき化石標本を見つけ,発表した。死亡したときはすでに成人だったルーシーとは違い,ディキカ・ベビーと呼ばれるこの化石は幼児だ。約330万年前のものでルーシーよりも古いが,「ルーシーの子ども」と呼ばれている。

 

 ルーシーを含めて,これだけ古い時代のホミニンで,これほど完全な骨格が発見されたのは初めてだ。これまでに発見された最古のホミニンの子どもとして,ディキカ・ベビーは私たちの古代の“親戚”がどのように成長したかを研究する初めての機会ともなった。「ルーシーを20世紀最大の発見とすると」と1974年にルーシーを発見したジョハンソン(Donald C. Johanson)はいう。「この子はこれまでのところ,21世紀で最大の発見だ」。

 

 

再録:別冊日経サイエンス194「化石とゲノムで探る 人類の起源と拡散」

原題名

Lucy's Baby(SCIENTIFIC AMERICAN December 2006)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

セラム二足歩行木登り肩甲骨モザイク進化