日経サイエンス  2007年1月号

ついに見えてきた地球コア直上の世界

廣瀬敬

2002年,兵庫県西播磨にある大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト)の光が,ある鉱物の結晶構造が変化する様子をとらえた。この鉱物は主成分こそケイ素にマグネシウムと酸素というごくありふれたものだが,これまでに誰も見たことのない,存在さえ知られていなかった原子の配置が実現した。超高圧高温の状態にある地球深部の物質を人工的に実現した鉱物なのだ。私たちが合成に成功したこの鉱物は,地球に関するさまざまな謎を解く手がかりになるだけでなく,火星についても教えてくれる。

著者

廣瀬敬(ひろせ・けい)

東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻教授,海洋研究開発機構地球内部変動研究センター上級研究員,博士(理学)。東京大学大学院で地質学を学び,1994年に学位を取得。おもな研究分野は高圧地球科学。地球の中が何でできているのかという,素朴な疑問から高圧実験を始めた。100万気圧以上の実験をした後,使っている宝石用ダイヤモンドが減圧中に必ず割れてしまうのが,何とも心苦しいという。研究のモットーは「やるなら目指そう世界一」。

サイト内の関連記事を読む