日経サイエンス  2006年9月号

スーパーボルケーノ 超巨大噴火の脅威

I. N. ビンデマン(オレゴン大学)

 米国西部,カリフォルニアとワイオミングの地下には普通の火山を数十個束ねたようなモンスター級火山「スーパーボルケーノ」が眠っている。同様の火山はインドネシアとニュージーランドでもくすぶっている。普通,火山の山頂部には,噴火後の地盤陥没で形成されるお椀状の凹み「カルデラ」がよく見られる。スーパーボルケーノにもカルデラがあるが,全容は人工衛星でなければ確認できない。凹みの直径は30~60km,深さは数kmに達するからだ。では,こうした火山が目覚めると,どんなことが起きるのか。その超巨大噴火の模様が,火山灰堆積物中の微小結晶の分析から再現された。

 

 スーパーボルケーノの地下には,これまたモンスター級のマグマ溜まりがあり,地下深部からマグマの供給が続くと,マグマ溜まり内の圧力が高まり,周囲の岩盤に亀裂が入る。地表に出現した亀裂はマグマ溜まりの直径に相当する巨大リングを形成し,そこから極端に加熱されたガスと火山灰が超音速で噴出,巨大な泡のような塊となって対流圏を突き抜け,成層圏上層まで上昇する。

 

 巨大リング状の亀裂がつながると,マグマ溜まりの天井となっていた岩盤は支えを失って崩壊し,マグマの中に落ち込む。これによって大量のマグマが一気に地表に押し出され,火砕流と呼ばれる巨大な灰色の熱雲が地表に吹き付ける。火砕流の移動速度は時速400km。車はおろか軽飛行機すら逃れられない。周囲数十kmにあるすべてのものを焼き尽くし埋めてしまう。噴火地点から半径数百kmの地域は数日から数週間にわたって灰白色の火山灰が雪のように降り積もるだろう。

 

 放出される膨大な火山ガスによって起こる「火山の冬」は意外に短期間で終わるかもしれない。懸念されるのはむしろオゾン層破壊だ。1991年に起きたフィリピン・ルソン島のピナツボ山噴火は20世紀最大級だったが,それによってオゾン層が3~8%減少した。だとすればピナツボ噴火の100倍も規模が大きい超巨大噴火ではどんなことになるのだろう?

 

再録:別冊日経サイエンス183「震災と原発」

著者

Ilya N. Bindeman

オレゴン大学地質学科助教授(地球化学)。モスクワで生まれる。最初は火山学に興味を持ち,極東ロシアのカムチャツカにある火山の研究に取り組む。1998年にシカゴ大学でPh. D.を取得後,世界最大規模の噴火の起源とそれがもたらす影響を探るため,火山灰中にある微小結晶の研究を始める。ウィスコンシン大学マディソン校とカリフォルニア工科大学を経て2004年にオレゴン大学に移り,地球化学の研究に取り組む。

原題名

The Secrets of Supervolcanoes(SCIENTIFIC AMERICAN June 2006)

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