日経サイエンス  2006年9月号

ハーセプチンを超える新しいガン治療薬

G. スティックス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 分子標的医薬の先駆けとなったジェネンテックの「ハーセプチン」は,米国で1998年に認可されて以来,特定の乳ガン患者に対して目覚ましい実績を上げてきた(日本では2001年に認可)。ハーセプチンの投与を受けた患者は,一般的な抗ガン剤のみを受けた場合より長く生存し,腫瘍の大きさも抑えられた。

 

 ジェネンテックの研究者はハーセプチンを開発するにあたり,ガン細胞の分子レベルでの働きに関する研究に着目した。特定の乳ガン患者ではガン細胞の外側に受容体が過剰に出現し,その受容体が2つ1組になると,ガン細胞を複製させるシグナルを引き起こし,またたく間にガン細胞が増殖し始める。抗ガン剤に対する耐性ができたり,腫瘍拡大につながる血管新生が促されるのもこのシグナルによる。

 

 ただし,ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)が効くのは,ガン細胞の表面にHER2という受容体を過剰に持つ乳ガン患者だけで,全体の20~25%にすぎない。また,他のガンへの効果は証明されていない。

 

 ジェネンテックでハーセプチン開発チームを率いていたシェパード(H. Michael Shepard)は,この開発プログラムを潰そうとする社内の圧力に対し,果敢に戦った。そんな彼はいま,このバイオテクノロジー大手の本社(サウス・サンフランシスコ)から1マイルと離れていない小さな新興企業の最高経営責任者に就任している。レセプター・バイオロジックスといい,ハーセプチンの一枚うわてを行こうと狙っている。

原題名

Blockbuster Dreams(SCIENTIFIC AMERICAN May 2006)

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