宇宙旅行者にとって最大の脅威はSFの世界では猛スピードで接近する小惑星や,飢えた異星人,帝国の宇宙戦艦といった類のものだ。しかし現実に人類が宇宙旅行に出かける場合,最大の脅威は宇宙線と呼ばれる高速粒子だ。これは目に見えないほど小さい。長期の宇宙旅行で旅行者が浴びる宇宙線の量は,ガンを引き起こすほど深刻な放射線量に匹敵する。宇宙旅行をするために立ちはだかる課題の多くは今後,十分な時間と資金さえあれば技術者が解決していくだろう。だが宇宙線がもたらすリスクは解決のメドがたっておらず,根本的な二律背反を伴っている。宇宙線は火星旅行の道を閉ざすものとなりかねない。
著者
Eugene N. Parker
星間ガスと磁場の専門家。1958年に太陽風仮説を提唱し,存在を示したことで知られている。太陽から活発に粒子が出ているというこの説は当時としてはあまりにも斬新過ぎて,Astrophysical Journal 誌は危うく却下するところだった。パーカーは太陽磁場についても,磁力線のつなぎ替えを含む現代的な理論を打ち立てた。シカゴ大学名誉教授で,米国科学アカデミーのメンバー。全米科学栄誉賞,米国天文学会のヘンリー・ノリス・ラッセル賞,京都賞など数々の賞を受賞している。
原題名
Shielding Space Travelers(SCIENTIFIC AMERICAN March 2006)







