日経サイエンス  2006年6月号

電波渋滞を避ける賢い無線

S. アシュレー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 現在の無線通信は周波数を動かすことができないので,同時に多数の人が同じ周波数を使おうとすると,“電波渋滞”によって干渉が起きて,通信が途絶したり,放送が視聴できなくなるなどの不都合が起る。しかし,その周波数の近くに利用できる空き周波数があることがわかれば,そちらに切り替えれば電波渋滞を避けて良好な通信が可能になる。

 

 無線通信装置にこうした柔軟な対応をさせるため,将来のラジオや携帯電話などに“知性”を持たせようという研究が進んでいる。コグニティブ無線(Cognitive Radio,認知無線と訳す例もある)という技術だ。今後10年で,ほとんどの無線装置に,この技術が導入されるだろう。例えば朝,車で通勤する場合,車に積まれたコグニティブ無線装置は沿道の電波状況を自動的に検知し,いろいろな無線帯域について,その電波の伝播特性や信号強度,品質をチェックする。

 

 こうして地域と時間帯ごとに,どのような周波数帯域を利用すれば最適の通信ができるかを記録したデータベースを自身の内に構築する。コグニティブ無線が信号を送受信する際は,すでに利用されている帯域を避けつつ,必要に応じて空き帯域を“寸借”する。

 

 こうした対処によって,無線周波数という有限の資源をずっと効率よく使えるようになる。無線通信ははるかに信頼性が高まって便利に,しかもずっと安くなるだろう。それどころか,もし期待通りにこの技術が発展すれば,無線周波数帯域に余裕さえ生じるようになるかもしれない。電波をめぐる状況は,がらりと変わってくる。

原題名

Cognitive Radio(SCIENTIFIC AMERICAN March 2006)

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