日経サイエンス  2006年6月号

ゲノムは誰のもの? 進む生命の特許化

G. スティックス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 現在,ヒトゲノムには約2万4000の遺伝子があることがわかっているが,その約20%に1件以上の特許が付与されている。そのなかでも最大の特許所有者は米インサイト社で,ヒト遺伝子関連特許の10%を所有している。

 

 生命特許の増加は,研究者にも特許の正当性を判断する側にも,さまざまな問題を投げかける。特許が足かせとなって,研究対象の遺伝子や分子を自由に扱えなくなれば,病気の診断・治療法や医薬の開発が妨げられるかもしれない。また研究者が法廷での争いに巻き込まれて多くの時間を費やす事態も懸念される。一方,特許庁や裁判所は,出願内容が特許に値するかどうか,つまり人間による「発明品」か,単なる「自然物」かを見きわめる必要がある。しかも,その判断基準はテクノロジーの進展によって変わらざるを得ないため,ますます厄介だ。

 

 1990年代後半から急速に伸び続けた出願数は,2001年をピークにやや減少傾向にある。その背景には,ゲノム解読の成果を世界の共有財産とするという科学者の決議や,役に立つかどうかわからない配列への特許出願が急増して,特許化のハードルが高くなったことなどもある。また米国と欧州では判断が異なり,米国の特許権者が欧州では同じビジネスを展開できないなど,新たな問題も生じている。

原題名

Owning the Stuff of Life(SCIENTIFIC AMERICAN February 2006)

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