日経サイエンス  2006年6月号

チップに載る「ナノ電池」

C. Q. チョエ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 ナノテクノロジーによって,まったく新しい設計の電池が生まれようとしている。将来は電子回路と一緒にマイクロチップに組み込めるようになるだろう。

 

 ベル研究所が電池を徹底的に作り替えようとしている。トランジスタの製造技術を応用し,チップ上に電子回路と一緒に組み込める電池を大量生産するのが狙い。電極をナノスケールにまで縮小した「ナノ電池」だ。

 

 接触面の性質が電圧に応じて超疎水性から親水性に変化する「エレクトロウェッティング」という現象を利用するのがポイント。電解質と電極を超疎水性の膜によって普段は分離しておき,電力が必要になったら膜の性質を親水性に変化させ,電解質が両極を浸すようにしてエネルギーを発生する。こうすることによって,電池を使っていない時に進むムダな電解反応をなくし,電池の寿命を延ばす。

 

 電極材料や酸化膜(絶縁膜)を望みの場所に形成する技術など,試行錯誤を繰り返した末に,実際に発電可能な試作品を完成させた。

 

 乾電池の代替品を狙っているのではない。彼らが目指しているのはもっと特殊な用途だ。例えば軍用機から投下するセンサーに組み込み,侵入者や有害物質,放射線を検知したときにだけ無線送信機を作動させて通報するといった用途が考えられる。

 

 エレクトロニクス産業は数十年にわたって微細化の革新を続けてきたが,ようやく電池がそのペースに追い付き始めたことをナノバッテリーが実証することになりそうだ。

原題名

Miniaturized Power(SCIENTIFIC AMERICAN February 2006)

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