日経サイエンス  2005年12月号

特集:地球の未来

豊かな「脱炭素社会」へ

エネルギー

A.B. ロビンス(ロッキーマウンテン研究所)

 単純な誤解が気候変動をめぐる論争を大きくゆがめている。環境保護主義者も懐疑論者のどちらも,気候変動を食い止めるには,経済発展を引き換えにしなければならないと主張している。地球の温暖化を食い止めるために化石燃料の消費を減らせば,スピーディーな輸送から温かいシャワーにいたるまで,エネルギーを必要とするあらゆるサービスのコストが上がってしまうという。環境保護主義者は,コストが少々上がってもそれだけの価値があるといい,米国政府高官をはじめとする懐疑論者は,余分な費用が膨大になると警告している。

 

 だが,どちらの言い分も間違いだ。気候変動を防ぐために化石燃料を適切に節約すれば,実際にはコストアップではなくコストダウンにつながる。エネルギーを効率的に使うと,思いがけない利益がもたらされるのだ。温暖化防止による利益ではない。化石燃料を節約したほうが経済的で,余分に買うよりも大幅に安上がりだからだ。

 

 ここでは,最大の価値をもたらす方法に的を絞って説明していこう。エネルギー単位当たりの仕事量をより多く引き出し,企業と消費者に提供できる方法だ。注目すべきは末端での使用効率だ。これを向上すれば,燃料,汚染,コスト面で膨大な節約につながる。発電所から家庭や工場まで輸送されるあらゆる段階で,大量のエネルギーが失われているからだ。つまり,下流で使われる電力量をわずかでも減らせば,上流のエネルギー投入量を大幅に削減できるのだ。

著者

Amory B. Lovins

コロラド州スノーマスに本部を置く非営利団体ロッキーマウンテン研究所の共同設立者でかつ最高責任者であり,コロラド州のグレンウッドスプリングスにあるエンジニアリング会社ファイバーフォージの会長でもある。物理学者として,30年以上にわたって,エネルギーや環境・開発・安全保障とエネルギーのつながりについて,世界各国の産業界や政府にコンサルティング活動を行ってきた。こうしたテーマについて29冊の著書と数百の論文を発表している。こうした活動によって,マッカーサーフェローシップをはじめとする数々の賞を受賞した。

原題名

More Profit with Less Carbon(SCIENTIFIC AMERICAN September 2005)

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