日経サイエンス  2005年9月号

進化したヨーダの姿 スター・ウォーズ最新作に見るCG技術

倉地紀子(科学ジャーナリスト)

 『スター・ウォーズ』シリーズ6部作の最後を飾る『エピソード3 シスの復讐』には従来とは比較にならないほど大規模にCG(コンピューターグラフィックス)が導入されているが,そうとは感じさせないシーンが多い。実写と見まがうリアリズムを作り出すために活躍したのが,今回初めて導入された「サブサーフェス・スキャタリング」と呼ばれる技術だ。

 

 サブサーフェス・スキャタリングはもともとは物体に入射した光が内部で散乱を繰り返した後に再び表面から外部に出ていく現象のことを指す。自然界ではほとんどの物体で多かれ少なかれこの現象が起きており,これをCGで正確に模擬すれば自然な質感を表現できる。ただ,計算量がかさむなどの問題があり,現実には難しかった。

 

 ところが2001年に,極めて実用的なモデルが発表された。光の入射点の真上と真下に仮想的な点光源を設け,上記のような複雑な計算の結果を,これら点光源からの光によって近似するというものだ。これを世界に先駆けて映像制作に導入したのが映像プロダクションILMだ。前作のエピソード2では採用が見送られたものの,その後改良が重ねられ,今回のエピソード3で晴れてデビューした。

 

 エピソード3では,ヨーダの皮膚の質感を作り出すうえでサブサーフェス・スキャタリングが大きな威力を発揮した。例えばヨーダが逆光で照らされているシーンでは,耳の後ろから差し込む光が皮膚の薄い部分を通してほのかに手前に浮き出てくる様子が非常に的確に表現されている。

 

 また,オビ=ワンやアナキンなどの顔や身体がCGで置き換えられているシーンでも,リアリティーを高めるためにサブサーフェス・スキャタリングが活用された。今回初めて登場したCGキャラクター「グリーバス将軍」の顔や,森林惑星キャッシークに生い茂る植物の質感を表現するうえでも,重要な役割を果たしたという。

著者

倉地紀子(くらち・のりこ)

科学ジャーナリスト。CGの新技術に関する記事を執筆している。

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