日経サイエンス  2005年8月号

稲妻から出るX線を追え

J. R. ドワイヤー(フロリダ工科大学)

 雷は悪天候がもたらす恐怖の中でも最もひどいものだ。米国内の死者数はハリケーンや竜巻を上回り,晴天にもかかわらず前触れなく発生することすらある。著者が住むフロリダ中部では,夏場は雷雨が毎日のように降る。皮肉なことに別名「太陽の州」とも呼ばれるこの州の住人は,空から訪れる死神の恐怖を避けるため午後を屋内で過ごすことが多いのだ。雷は世界中で毎日約400万回も発生しており,地球以外の天体でも観測例がある。しかし身近な現象であるにもかかわらず,落雷のメカニズムはまだよくわかっていない。1752年にフランクリン(BenjaminFrankrin)による凧揚げ実験で雷の謎が解けたという有名な話がある。実はこれは誤りだ。彼は雷が電気的現象であることを実証したに過ぎない。

 

 現代の科学者たちは,雷雲中に電荷が発生する仕組みや落雷のメカニズムを解き明かそうと努めている。一部の物理学者は,地球の外の事象である宇宙線(宇宙から地球に降り注ぐ高エネルギー粒子)と落雷との間に関連があり,宇宙線によって大気内で高速電子のシャワーがなだれのように誘発されるという仮説を立てた。

 

 最近になって,雷研究の新手法が見つかった。雷が雷雲から地面に落ちる際に放射されるX線を観測するというやり方だ。ここ2,3年間,私たちは自然界の落雷および雷雲中にロケットを打ち上げて誘発させた人工落雷からのX線を測定してきた。その結果,稲妻は高速の電子を放出することによってジグザグの経路を生み出しているらしいことがわかった。しかし稲妻が電子を加速する原理は非常に難解であり,謎を解明するためにアレイ(配列)状X線検出器をフロリダに建設中だ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス195「空からの脅威」

著者

Joseph R. Dwyer

フロリダ工科大学の物理学および宇宙科学の準教授。シカゴ大学で1994年に物理学博士号を取得した後,コロンビア大学およびメリーランド大学で研究に従事,2000年にフロリダへと移住した。本研究にあたって,ラスル(H.Rassoul),ラコフ(V.Rakov),アル=ダイェ(M. Al-Dayeh),ジェラルド(J. Jerauld),キャラウェイ(L. Caraway),ライト(B.Wright),ランボー(K. Rambo),およびジョーダン(D. Jordan)に謝辞を捧げている。

原題名

A Bolt out of the Blue(SCIENTIFIC AMERICAN May 2005)

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