日経サイエンス  2005年7月号

地磁気反転の謎に迫る 見えてきた内部磁場の動き

G. A. グラッツマイヤー(カリフォルニア大学サンタクルーズ校) P. オルソン(ジョンズ・ホプキンズ大学)

 地球45億年の歴史の中で,地磁気の南北は何百回となく入れ替わってきた。反転の理由は長い間,研究者の間で謎だった。だがここ10年の研究でその謎が解け反転の仕組みがわかってきた。スーパーコンピューターによるシミュレーション,人工衛星による磁場観測,地球のコアを模擬した実験装置の開発などの成果だ。
 地球の中心コアにはダイナモ(発電機)があり,そこから磁場が発生し,地球全体を覆う双極子を作っている。秘密はそのコアとマントルの間の境界上にあった。人工衛星の観測から,この境界上に通常の向きとは逆の磁束斑があることがつきとめられた。
 これは「逆磁束斑」と呼ばれる。
最大のものはアフリカ南端から南米大陸の南端の下まで広がっている。過去の観測と比べた結果,逆磁束斑はコア・マントル境界上で次々と形成されていることがわかった。
 この逆磁束斑は磁力線が地球の自転のコリオリ力の作用を受けたり,東西方向の磁場の影響を受けたりすると形成されるらしい。逆磁束斑が磁場反転の原因となるのか検証するためにスーパーコンピューターによるシミュレーションが行われた。
 1995年からグラッツマイヤーらのほか,日本の陰山聡など3つのグループがほぼ同時にスーパーコンピューターで地球ダイナモによって生じる磁場のシミュレーションを始めた。数十万年分を再現する計算の結果,双極子磁場が発生し,コア・マントル境界上に逆磁束斑ができたあと,磁場の反転も起きた。
 だがこれらのシミュレーション結果がそのまま地球のコアの中で起こっているとは誰も確証が持てない。なぜなら計算はすべて近似値を使っているからだ。コア内の熱対流は複雑で細かい乱流が多数存在しているはずだ。現在のスーパーコンピューターではこの乱流を3次元的に扱うことは不可能だ。
 乱流の効果を組み込んだシミュレーション方法の研究が進む一方で,地球ダイナモを模した実験装置の開発も進んでいる。液体ナトリウムを入れた巨大な容器を回転させてダイナモ機構を作り出す実験だ。
 地球ダイナモの機構を完全に解明するにはもう少し時間がかかりそうだ。

著者

Gary A.Glatzmaier / Peter Olson

グラッツマイヤーは,1990年代中頃,当時所属していた米国立ロスアラモス研究所において,カリフォルニア大学ロサンゼルス校のロバーツ(PaulH. Roberts)と共に世界で初めて,磁気双極子の反転が自己発生する地球ダイナモ・シミュレーションを実現した。グラッツマイヤーは1998年以来カリフォルニア大学サンタクルーズ校の地球科学科の教授。オルソンが特に関心を抱いているのは,地核およびマントルの相互作用から地球磁場が生み出される仕組みや,プレート・テクトニクス,深部マントル・プルームだ。1978年にジョンズ・ホプキンズ大学の地球・惑星科学科に所属し,ここ3年間は学科長を務めている。

原題名

Probing the Geodynamo(SCIENTIFIC AMERICAN April 2005)

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