日経サイエンス  2004年9月号

オオカミが変えたイエローストーン国立公園

J.ロビンス(フリージャーナリスト)

 1995年の真冬,米国立公園局と魚類野生動物局は14頭のハイイロオオカミ(Canis lupus)をトラックとそりでイエローストーンに運び込んだ。この地のオオカミが20世紀初頭に根絶されて以来,イエローストーンにオオカミがすみつくことになったのは,カナダからのこのオオカミたちが初めてだ。1年後さらに17頭のカナダ生まれのオオカミが追加された。

 

 オオカミが再びこの地に来たことによって,さまざまな動物の生息数が本来の自然の状態に近づくだろうと期待された。例えば公園内で増えすぎたエルクをオオカミが捕食すれば,その数も落ち着くだろう。この地域で最上位の捕食者だったオオカミが姿を消して以来,エルクは急増していたのだ。

 

 新たにやってきたオオカミの行動は予測どおりだった。現在公園内を移動するオオカミは約10頭ずつ16の群れに分かれている。それぞれの群れが平均1日1頭のエルクを倒す。1990年代には2万頭まで膨れ上がっていたエルクは,現在1万頭以下となった。

 

 オオカミの復帰は非常に多くの予想外の影響を及ぼした。公園内の動植物に対するオオカミの影響は奥が深い。あまりに広い範囲にまで変化が及んでいるため,米国中の研究者たちがそれを調べに来ている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス206「生きもの 驚異の世界」

著者

Jim Robbins

モンタナ州ヘレナに拠点を置くフリーランスのジャーナリスト。New York Times紙などに米国西部の変化について寄稿している。

原題名

Lessons from the Wolf(SCIENTIFIC AMERICAN June 2004)

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