日経サイエンス  2004年9月号

DNAで組み立てるナノマシン

N.C. シーマン(ニューヨーク大学)

 生命のカギを握るDNAだが,生物学とはまるで別の世界でも大活躍しそうだ。塩基配列をうまく調整した人工のDNAを作ると,小さな分子マシンを組み立てるまたとない構造材料になる。

 

 DNAは相補的な塩基配列をした他のDNA鎖と結合する。このため,塩基配列をうまく調整しておくと,相互に結びついて複雑な構造を自然に作り上げる。通常は二重らせん構造が最も安定だが,細胞分裂に備えてDNAが複製されるときや,遺伝的組み換えの過程では,DNAの分岐が起きる。これを模擬すると,複数のDNA鎖が分岐した構造を作り出すことも可能だ。

 

 著者たちの研究グループは,DNA鎖によって立方体や切頂八面体と呼ばれる形の構造を作った。また,2種類のDNA分子をブロックのように組み合わせて,特定のパターンを持つ2次元の結晶を作り出した。

 

 こうした構造を利用すると,その中に別の分子を規則的に並べ,結晶解析の手法で分子構造を調べられる。分子サイズの電子素子を組み込んだり,分子を狙い通りに配置した新材料を作るのにも利用できるだろう。

 

 DNAの立体構造を部分的に変化させると,ナノスケールの機械ができる。通常の右巻きDNAを左巻きに変化させるなどのテクニックを使う。化学反応や特別なDNA鎖を添加することによって動作を制御する実験に成功した。将来は自己複製するナノマシンへと発展していくかもしれない。

著者

Nadrian C. Seeman

結晶学が専門だが,高分子を結晶化する困難を身をもって感じ,分岐DNAを結晶づくりに利用する手法を考え出した。過去16年間にわたってニューヨーク大学化学科に勤務している。

原題名

Nanotechnology and the Double Helix(SCIENTIFIC AMERICAN June 2004)

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