日経サイエンス  2004年9月号

短期集中連載:がらくたDNAに注目せよ(2)

病気を起こす反復配列

紀嘉浩 笹川昇 石浦章一(東京大学)

 1990年代初頭に,一群の実に奇妙な疾患の原因が明らかになった。これらの疾患は症状はさまざまだが,ある共通点があった。遺伝性疾患であるにもかかわらず,親よりも子,子よりも孫と,世代を経るにしたがって病状が重くなり,発症年齢も若くなっていくのだ。これは,メンデルの遺伝の法則に合わない奇妙な現象で,原因となる遺伝子にいったい何が起きているのか,解明が待たれていた。

 

 その原因は,遺伝子の中にある「反復配列」が異常に長くなることだった。反復配列は,3塩基や4塩基といった短い配列の繰り返しで,ヒトゲノムにはたくさんあることが知られている。患者の反復配列は健康な人よりも繰り返し回数が多く,その家系では世代を経るにしたがって,どんどん長くなってしまうのだ。さらには“遺伝子の中”とはいっても,タンパク質のアミノ酸配列を指定していない部分に反復配列が存在することもある。この場合,その遺伝子に書かれたタンパク質のアミノ酸配列情報をながめているだけでは,何が起きているのか決してわからないのだ。

 

 私たちの研究を中心に,この奇妙な反復配列の振る舞いと,それがなぜ病気をもたらすのかを紹介しよう。

著者

紀嘉浩(きの・よしひろ) / 笹川昇(ささがわ・のぼる) / 石浦章一(いしうら・しょういち)

紀は東京大学大学院総合文化研究科博士課程3年,笹川は同じ研究室の助手で,石浦は教授。筋強直性ジストロフィーの原因の究明と治療法の開発は,10年越しの研究室の悲願である。

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

トリプレットリピート病ポリグルタミン病ポリアラニン病筋強直性ジストロフィー脆弱X症候群ハンチントン病muscleblindファミリー