日経サイエンス  2004年2月号

小惑星直撃から地球を救う 宇宙のタグボート

R.L. シュワイカート E. T. ルー P. ハット C. R. チャップマン(B612財団)

 人類の滅亡につながる小惑星衝突が起きる確率はゼロではない。ハリウッド映画では核爆弾を使って軌道をそらすが,直撃を避けるにはもっと確実な方法が必要だ。

 

 直径100mの小惑星が直撃すれば大都市が壊滅し,1kmの小惑星ならば人類は滅亡しかねない。地球に向かってくる小惑星の軌道をそらすさまざまな案が検討されてきたが,核爆発や物理的衝撃を使う方法は結果が予想できず信頼性が低い。しかし,時間的余裕が十分にある場合,プラズマエンジンを搭載した宇宙船で小惑星をゆっくりと押せば,衝突を確実に回避できる。

 

 衝突まで10年の余裕があるなら,秒速1cmだけ小惑星を加速すればよい。これによって小惑星の軌道はわずかに広がり,軌道周期も長くなる。例えば軌道周期が2年の小惑星の場合,秒速1cmの速度変化によって周期は45秒延び,10年間では225秒の遅れが生じる。わずかな余裕を残して地球との衝突を避けるに足る時間だ。

 

 小惑星タグボートのアイデアと関連技術を実証するため,私たちは大きさ200mの小惑星の軌道を変えられるタグボートの開発を提案してきた。実際にテスト機を飛ばしてみれば2015年までには実証できるだろう。私たちはこの試験的なミッションを「B612計画」と名づけた。B612はサン=テグジュペリの有名な童話『星の王子さま』に登場する小惑星の名前だ。

 

 小惑星タグボートに活用可能な原子炉や推進装置を,すでに米航空宇宙局(NASA)が開発中だ。

著者

Russell L. Schweickart / EdwardT. Lu / Piet Hut / Clark R. Chapman

2002年10月,4人はB612財団を設立した。小惑星を地球からそらす技術の開発と実証を目的とした非営利団体だ。シュワイカートは同財団の理事長で,1969年にアポロ9号の月着陸船を操縦したNASAの元宇宙飛行士。1973年にはスカイラブ計画の最初のミッションで後方司令官を務めた。ルーは同財団の評議会会長を務め,現役の宇宙飛行士でもある。この記事を共同執筆するにあたって,滞在中の国際宇宙ステーションから電子メールで原稿を送ってきた。ハットはプリンストン高等研究所(ニュージャージー州)の教授で,数値天体物理学と高密度恒星系を主な研究対象としている。チャップマンはコロラド州ボールダーにあるサウスウエスト研究所の科学者。近く打ち上げられる水星探査機「メッセンジャー」の科学チームの一員でもある。

原題名

The Asteroid Tugboat(SCIENTIFIC AMERICAN November 2003)

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