日経サイエンス  2003年11月号

特集1:RNA干渉 

小さなRNAの遺伝子とその標的を探せ

多比良和誠(東京大学,産業技術総合研究所)

 世界的に高く評価されている科学誌Scienceが昨年末「2002年の科学ニュース・トップ10」と題した特集を掲載した。日本で昨年一番話題になったのは素粒子ニュートリノの研究だろうが,国際的には「小さなRNA」が他を抑えて堂々の1位に輝いた。新聞の派手な見出しのことを英語でsplash headlineというが,同誌が紹介した「小さなRNA」の見出しは「Small RNAs Make Big Splash」だった。
 

 小さなRNAの研究で特筆すべきは,多数のマイクロRNAが従来「ジャンクDNA」などと呼ばれてきたタンパク質の設計図が載っていない領域から作られることだ。つまり,役立たずのジャンク(がらくた)と思われていた領域に,細胞の運命を決める重要なマイクロRNA配列が描かれていたのだ。ジャンクDNAという言葉が教科書から消える日も近いだろう。

 

 マサチューセッツ工科大学のバーテル(David P. Bartel)はヒトには200~255個のマイクロRNA遺伝子があると予測しているが(左ページ),それらのマイクロRNAがどの遺伝子をターゲットにしているのかを突き止めるのは非常に難しい。しかし,私たちのグループでは世界で初めて哺乳類細胞での標的遺伝子を報告したのを皮切りに,90個以上の標的遺伝子を見つけだすことに成功している。
 さらには1つのマイクロRNAが複数の遺伝子の発現を抑えていることも明らかにした。

 

著者

多比良和誠(たいら・かずなり)

東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻教授,産業技術総合研究所ジーンファンクション研究センター長,株式会社iGENEのファウンダー・取締役,Ph.D.。1984年にイリノイ大学大学院博士課程修了。ペンシルベニア州立大でのポスドク研究員,通産省・工業技術院主任研究官,筑波大学応用生物化学系教授を経て,1999年より現職。米国では物理有機化学を専門としたが,10年ほど前に畑違いのRNA研究を独自に開始。核酸医薬の誕生を信じている。

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