日経サイエンス  2003年11月号

特集1:RNA干渉 ノーベル賞級の新発見

編集部

 生命科学の分野で意外な新現象が見つかった。RNAどうしが邪魔し合って働かなくなる「RNA干渉」だ。遺伝子発現を抑制する強力な仕組みが生物にもともと備わっていたことを知って科学者たちは驚愕した。“ノーベル賞級”の発見といえるだろう。
 ゲノム(全遺伝情報)はDNAの塩基配列として書き込まれており,これがRNAに転写され,タンパク質に翻訳される――この過程のどこかを妨害すれば,遺伝子は機能しなくなる。RNA干渉はその手だてとして,いま最も注目を集めている。病気の原因となる邪悪な遺伝子を封じることができれば,医療は一変するだろう。
 この特集では,ポストゲノム時代のカギを握るRNA干渉について,その全体像に迫る。『ゲノムを見張る驚異のメカニズム』はこの現象の発見から解明に至る道筋と,残された謎を解説。『小さなRNAの遺伝子とその標的を探せ』では,この分野の国内第一人者である多比良和誠東京大学大学院教授にホットな研究状況を報告してもらった。『日本でも進む新薬開発への応用』ではRNA干渉ビジネスに向かって走り出した国内企業の姿をリポートする。