日経サイエンス  2003年11月号

地球が「猿の惑星」だったころ

D. R. ビガン(トロント大学)

 現在では,類人猿の生息地域は限られており,種の数も個体数も少ない。しかし,中新世(2200万年~550万年前)の地球には100種もの類人猿が暮らしていた。とくに,フランスから中国にかけてのユーラシアと,ケニアからナミビアに至るアフリカに広く分布していたようだ。

 

 これまでの化石や遺伝的分析によると,人類に最も近いチンパンジーと人類との最後の共通祖先は800万年から600万年前のアフリカで誕生したと考えられる。では,この共通祖先のさらなる祖先はどこで生まれたのだろうか?やはりアフリカだろうというのが長年の定説だったが,化石証拠が増えたことで,アフリカ説にほころびが出てきた。

 

 アフリカ説の最大の弱点は,大型類人猿の化石がヨーロッパやギリシャ,トルコ,中国,東南アジアなど,ユーラシアからしか見つかっていないことだ。著者は,プレートの移動や気候変動によって動物の移動が頻繁に起きた結果,最終的に2つの系統の類人猿が生き残り,その中から現代型類人猿が生まれたと考えている。近年スペインとハンガリーで発掘された世界最古の大型類人猿ドリオピテクスの化石は,現生類人猿の祖先のユーラシア誕生説にとって有力な証拠になりそうだ。

著者

David R. Begun

トロント大学の人類学教授。1987年にペンシルベニア大学で形質人類学のPh.Dを取得。中新世のホミニドの進化に関心が深く,スペイン,ハンガリー,トルコ,ケニアで発掘・調査を始めた。2000万年前から200万年前の旧世界を特徴づける,景観と哺乳動物の拡散パターンの復元をめざし,現在,同僚とともにトルコ,ハンガリーの類人猿の化石調査を行っている。

原題名

Planet of the Apes(SCIENTIFIC AMERICAN August 2003)

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