日経サイエンス  2003年9月号

オーファンドラッグ計画の功罪

T.メーダー(ジョージタウン大学)

 オーファンドラッグとは希少疾病用医薬品のことで,市場が非常に小さいため,営利を目的とする製薬会社によって生産が望めない薬剤だ(orphanは孤児の意味)。米国食品医薬品局は,治療の対象となる患者が20万人未満と予想される薬剤をオーファンドラッグとしている(日本の制度では患者数5万人未満)。

 

 1983年に施行されたオーファンドラッグ法は,こうした希少疾病の治療薬を開発するよう製薬企業やバイオテクノロジー企業に対して優遇措置をとることを定めた。オーファンドラッグを進んで製造する企業に税額控除と7年間の市場独占権を与えている。

 

 ところが,赤血球を増加させるエポエチンαをはじめ,オーファンドラッグ指定を受けたのちに他の病気や症状にも使えることがわかって,超ベストセラーとなった薬がいくつも出た。このため,企業はオーファンドラッグ法を乱用して利益を得ているのではないかと疑問視する声もある。オーファンドラッグ指定の薬でよく売れているものの上位10のうち,7つが遺伝子組み換え医薬であるため,バイオテクノロジー産業の保護に利用されているという指摘もある。

 

 しかし,オーファンドラッグの開発を求めてきた人たちは,この法はうまく機能していると評価している。1983年以前は,医薬はあるのに患者数が少ないために市場に出ないという状況だったが,今ではそうした薬が患者の手に渡るようになったからだ。(本文より)

著者

Thomas Maeder

ジョージタウン大学医療センター科学戦略部門上級アドバイザー。子供に致命的な血液障害を引き起こしたクロラムフェニコールの悲劇を通して見た現代の薬剤規制についての著書AdverseReactionsをはじめ,多数の著書がある。

原題名

The Orphan Drug Backlash(SCIENTIFIC AMERICAN May 2003)

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