日経サイエンス  2003年7月号

恐竜の羽が明かす進化の驚異

R.O. プラム(カンザス大学) A. H. ブラッシュ(コネティカット大学)

 生物そのものであれ,その体の一部であれ,形態の小さな変化やサイズ・長さの変化は進化論でうまく説明できる。しかし,羽や眼,肢,指といったまったく新しい構造が,なぜある系統で突如出現したのかを知ろうとすると,進化論はあまり助けにはならない。羽の起源は,誰もが持つ素朴な疑問をもっとも端的に示す例だろう。

 

 羽の起源に関してはとりわけ謎が多い。今から考えれば誤った手がかりをもとに研究を進めたため,かえって謎の解明が遅れてしまった。原始的な羽は爬虫類のウロコが長く伸びて枝分かれしたものだという仮説や,羽は飛翔などの特別な目的のために進化したという推論などだ。

 

 原始的な羽の化石が見つからなかったことも進歩を妨げた。最古の鳥の化石はジュラ紀後期(1億4800万年前)の始祖鳥(Archaeopteryxlithographica)だが,そこからは羽の進化に関する手がかりはまったく得られなかった。始祖鳥の羽は現在の鳥のものとほとんど区別がつかないほど進化していたからだ。

 

 ごく最近得られた研究成果により,こうした昔からの謎を解明する糸口が見えてきた。まず,生物学の分野で発生の過程,すなわち個々の生物が受精卵から成体の大きさと姿に成長していく複雑なメカニズムが,その種の進化をのぞく窓になりうるという考え方を支持する証拠が見つかりだした。このアプローチは,羽の起源を探るための頼もしい武器となった。

 

 さらに古生物学の分野で,中国から羽の生えた恐竜の化石が見つかった。これらの恐竜には,現在の鳥類や始祖鳥のものほどには高度に進化していない,さまざまな原始的な羽が生えていた。それらは,現在の鳥類の複雑な羽の構造や機能,進化の謎を解くための重要なヒントとなる。

 

 こうした成果が合わさって,羽の進化を詳しく説明する革命的な仮説が生まれた。羽は,鳥類の登場や飛翔行動が出現するより前に,二足歩行をする肉食性の獣脚類恐竜に出現し,多様化していったのだ。

著者

Richard O. Prum / Alan H. Brush

2人はともに羽の生物学的な研究に情熱を燃やしている。プラムは10歳のときにバードウォッチングを始め,現在はカンザス大学の生態学・進化生物学科準教授,カンザス大学自然史博物館と生物多様性研究センターの鳥類学部長を務めている。彼の研究テーマは鳥類の系統発生,鳥類の求愛と繁殖システム,構造色の物理学的特性,羽の進化である。中南米やマダガスカル,ニューギニアで野外研究の指揮をとった。ブラッシュはコネティカット大学の生態学・進化生物学の名誉教授である。彼は羽の色素,ケラチン生化学および羽の新奇性の進化を研究テーマとしてきた。鳥類学の学術誌であるTheAukの編集者を務めている。

原題名

Which Came First, the Feather or the Bird?(SCIENTIFIC AMERICAN 2003 March)

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