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日経サイエンス 2003年6月号
> 特集 再生医療 組織幹細胞を使って 脊髄損傷治療への道
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特集 再生医療
組織幹細胞を使って
脊髄損傷治療への道
岡野栄之
私は当初,神経の発生過程において中枢神経系を構成する細胞の多様性がどのように形成されてくるかに興味をもち,その制御機構を研究していた。そのうち,研究対象を多様性のもととなる神経幹細胞に絞っていった。1998年に成人の脳内に神経幹細胞らしき細胞を発見して以来,本格的に神経再生を目指した研究を始めるようになった。対象疾患の1つとして脊髄損傷を選んだ。
しかし研究すればするほど,脊髄損傷は難しい疾患だと思い知らされた。脊髄を再生させるには,損傷した軸索の再生や損傷で失われた細胞の補充に加えて,機能の再生も必要となる。治療には,このすべてを効率よく行わなければならない。まさに,神経生物学の幅広い知識を必要とするチャレンジングなテーマでもあった。
神経幹細胞を移植するのはいつがよいだろうか?少なくとも炎症の盛んな損傷直後ではないだろう。また,損傷後数週間もたって慢性期になると,損傷部周囲では空洞がますます大きくなり,グリア瘢痕ができて軸索の再生を阻害してしまう。移植に最適な時期は損傷から7〜14日ころの亜急性期だろうと想定した。
頸髄を圧迫した損傷モデルラットの亜急性期(損傷から9日後)に,試験管内で増やしたラット胎仔の脊髄に由来する神経幹細胞と神経前駆細胞の混合物を損傷部の空洞内に移植した。すると,移植していないラットに比べて,餌を前肢でつかんで口に運ぶといった運動機能に明らかな回復が見られた。(本文より抜粋)
キーワード:
ニューロスフィア/神経の機能回復/ニューロン/グリア細胞/軸索の再生/脱髄/再髄鞘化
著者
岡野栄之(おかの・ひでゆき)
慶應義塾大学医学部生理学教室教授。1983年に慶應義塾大学医学部を卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部研究員,筑波大学基礎医学系分子神経生物学教授,大阪大学医学部神経機能解剖学教授を経て,2001年より現職。専門は中枢神経系の発生と再生,幹細胞生物学。
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