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日経サイエンス 2003年6月号
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暗黒物質ニュートラリーノを追う
D. B. クライン
宇宙は観測できない暗黒物質(ダークマター)で覆われている。天体や星間ガスの質量を合計しても,銀河や銀河団をつなぎ止めておく重力には足りないことから,未知のダークマターが存在することは間違いない。しかし,これまでは状況証拠しかなかった。
ダークマター存在の証拠をつかもうと,世界中で観測プロジェクトが進行している。ダークマターはどんな物質もすり抜けてしまう超対象性粒子のニュートラリーノでできていると考えられ,直接観測することはできない。だが,2002年のノーベル物理学賞を受けた小柴昌利東京大学名誉教授がニュートリノの観測に使った方法なら可能性がある。
ニュートラリーノは非常にまれだが,原子核と衝突することがある。これが「反跳現象」で,ニュートラリーノとぶつかった原子核はその運動エネルギーを周囲の物質に受け渡したり,電子を外側の原子核に弾き飛ばして励起状態になったりする。このときに起こるわずかな温度上昇や電離現象の痕跡を拾い出せれば,ダークマターが存在する証拠を観測できるわけだ。
ただ,自然放射能や宇宙線による背景ノイズの方が大きいので,それらを極限まで減らす工夫が必要だ。まず,宇宙線の届かない地下深くに検出器を設置し,さらに特殊な遮蔽物で覆う。次に,検出器に使う材料の純度を高め,放射能性物質の混入を極力減らす。それでも不十分なので,新型のダークマター検出器にはさらに工夫をこらしている。太陽系は天の川銀河(銀河系)の中心に対して秒速220kmで周回しているが,地球の公転運動を考慮すると,北半球の夏と冬とではダークマターが地球に降り注ぐ量が違う。
この差を検出したとイタリアのDAMAプロジェクトが発表したが,追試の結果では否定的だ。しかし,現在進行している観測プロジェクトによって,ダークマターが存在するか否定されるか,明らかになるはずだ。
キーワード:
超対象性粒子(ニュートラリーノ)/弱い相互作用/反跳現象/低温検出器/シンチレーション検出器
著者
David B. Cline
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の物理学と天体物理学の教授。素粒子物理学の最重要課題である高エネルギーのニュートリノや陽子崩壊,W/Zボソン(弱い核力を伝える粒子)に取り組んでいる。現在はジュネーブ近郊の(CERN)で進められている低温ダークマター探索(CDMS)プロジェクトで,検出器を使った研究に従事している。
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