日経サイエンス  2003年4月号

最古の人類に迫る 700万年前の化石の謎

K. ウォン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 この2,3年間に,人類とアフリカ類人猿の祖先との間に残る空白を大昔にさかのぼって橋渡しできるような,3つの素晴らしい発見が続いた。

 

 パリにある国立自然史博物館の古生物学者ピックフォード(Martin Pickford)とセニュ(Brigitte Senut)は,ケニアのツーゲンヒルでオロリン・ツゲネンシス(Orrorin tugenensis,オロリンは現地語で最初の人の意味)という600万年前の人類化石を発見した。現在までに下顎骨片,単独の歯,指や腕の骨,大腿骨片など19個の化石が採集された。大腿骨の特徴は二足歩行を示していたが,反論もある。

 

 オロリンが公表されてから2~3カ月後に,カリフォルニア大学バークレー校のホワイトが率いる発掘チームにいた大学院生のハイラセラシエ(Yohannes Haile-selassie)が,エチオピアのミドルアワッシュでオロリンより少し新しい時代の化石を発見した。580万~520万年前のこれらの化石は,アルディピテクス・ラミダスの亜種でアルディピテクス・ラミダス・カダバ(Ardipithecus ramidus kadaba,カダバは現地語で祖先の意味)と命名された。この化石では二足歩行の判断材料となる足の指が見つかった。

 

 この2つの化石の解釈を巡って学界が騒然としていたころ,フランスのポワチエ大学のブルネ(Michel Brunet)らはアフリカ中部のチャドで見つけたほぼ完全な700万年前の頭骨を発見した。サヘラントロプス・チャデンシス(Sahelanthropus tchadensis)だ。

 

 約700万年前から500万年前にわたるこれらの化石は定説には合わないので,激しい論争が起きている。もし,この化石が本当に人類の祖先であれば,いつ,どこで人類の系統が誕生したか,あるいはヒトとチンパンジーの最後の共通祖先はどのような姿をしていたかに関しての通説は根底からひっくり返ってしまう。実際,これらの化石が系統樹のどこに位置するのか,あるいは最初の人類はどれかに関して,研究者の見解は完全に分かれている。

原題名

An Ancestor to Call Our Own(SCIENTIFIC AMERICAN January 2003)

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