日経サイエンス  2002年6月号

C60が語る巨大隕石衝突と大量絶滅

L.ベッカー(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)

 たいていの人はその事実を知らずにいるが,実は,地球はたびたび宇宙からの爆撃を受けている。太陽系の周辺には彗星や小惑星,その他の岩や石がごろごろしている。太陽系が誕生したときに取り残されたもので,これが地球めがけて飛んでくることがあるのだ。

 

 実際に地球に衝突するのはほとんどは細かな宇宙塵だが,中には直径5kmを超す大きな岩塊もある。天文学者たちは月のクレーターの数に基づいて,こう推定している──直径5kmを超える巨大な岩塊が過去6億年に約60回地球に衝突した。このうち最も小さい衝突でさえ,直径95kmの傷跡を残し,TNT火薬1000万メガトンに相当するエネルギーを放出したはずだ。これは広島型原爆の約6億7000万個分にもなる。

 

 このような大衝突は,地球とその生物相を一変させたに違いない。化石の記録を見ると,当時の生物種の半分以上が死に絶えたような「大量絶滅」が過去に5回起きている。最後に起きたのは6500万年前,恐竜たちの絶滅だ。長い激論の末,小惑星の衝突が原因だとする説が受け入れられつつある。しかし,このほかの4回の大量絶滅については,同時期に天体衝突があったという明らかな証拠は最近までほとんど見つかっていなかった。

 

 この2年間に,衝突が起きた年代と場所を推定する新手法が開発され,他の大量絶滅についても衝突との関連が有力になりつつある。5回のうち最も大規模だったのは90%以上の種が一掃されたペルム紀末(2億5000万年前)の大量絶滅だが,この年代に堆積した岩石の中から,天体衝突痕跡と思われる証拠が見つかった。残りの3回の大量絶滅についてはまだはっきりしていないものの,やはり衝突との関連が疑われている。

著者

Luann Becker

カリフォルニア州ラホーヤのスクリプス海洋研究所で1990年に地球化学者としての仕事を始めて以来,衝突追跡子を研究してきた。1998年に,隕石採集のための南極探検に参加し,2001年に米国立科学財団南極勤務メダルを受賞した。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教官となり,衝突追跡子としてのフラーレンとその中に閉じ込められたガスの研究を続けた。この夏には,南アフリカとオーストラリアのペルム紀末の絶滅を記録した地層の調査をする予定だ。

原題名

Repeated Blows(SCIENTIFIC AMERICAN March 2002)

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