日経サイエンス  2002年4月号

動き出した次世代原子炉計画

J.A. レーク R. G. ベネット(米エネルギー省) J. F. コテック(アルゴンヌ国立研究所)

 電力料金の上昇基調が続いているほか,2001年夏には米カリフォルニア州で大規模な停電が発生し,電力の安定供給に懸念が広がっている。こうしたなか米国では原子力発電が再び脚光を浴び始めた。過去10年間で原発の安全性は着実に向上し,発電効率や稼働率も過去最高の水準に達している。

 

 一方最近では,温暖化ガスの排出を減らし,地球温暖化を防ぐことに世界の関心が集まっている。温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質を排出しない発電技術として,原発を重視する専門家も多い。世界全体のエネルギー需要は2030年時点で現在よりおよそ50%増え,2050年にはほぼ倍増すると予想されている。将来,原子力発電が担うであろう役割を正当に評価すべき時期を迎えているのではないだろうか。

 

 最近,新しい原子力技術の開発に向けて斬新なアイデアが導入されようとしている。1つは,ウランの採鉱から廃棄物の管理まで原子燃料の利用サイクルを全面的に見直し,それらの土台となる新しいインフラを整備しようという考え方だ。第2に,原子力技術を評価する際,「持続可能性」が重要な尺度になってきた。持続可能性とは,現在のエネルギー需要を満たすだけでなく,将来の経済発展を妨げないようにする,という考え方だ。

 

 原発を発電に使うだけでなく,副産物として水素を燃料電池向けに製造し,自動車や家庭のエネルギー源として利用するアイデアも登場した。

 

 原子力発電の持続可能性を高め,安全性や経済性を大幅に高めようと,米エネルギー省は1999年,「ジェネレーションIV」と呼ぶ開発計画に着手した。この計画は国際的にも関心を集め,2000年には米国のほか日本,韓国,英国,フランス,ブラジル,南アフリカ共和国など計9カ国が参加する国際研究も始まった。この計画で浮上している次世代原子炉を詳しく紹介する。

著者

James A. Lake / Ralph G. Bennett / JohnF. Kotek

いずれも米国の原子力エネルギー計画立案で中心的な役割を担っている。レークはエネルギー省傘下の国立アイダホ工学・環境研究所(INEEL)原子力エネルギーシステム部門の副研究所長を務め,原子力の利用と安全,再生可能エネルギー,化石エネルギーの研究開発を指揮している。2001年には米国原子力学会の会長を務めた。ベネットはINEELの原子力エネルギー部長で,エネルギー省の「ジェネレーションIV計画」の立案に参画した。コテックはアイダホ州西部にあるアルゴンヌ国立研究所の特別プロジェクト責任者で,ジェネレーションIV計画にも参加。1999年に同研究所に移る前はエネルギー省原子力・科学技術局の技術担当副部長だった。

原題名

Next-Generation Nuclear Power(SCIENTIFIC AMERICAN January 2002)