日経サイエンス  2002年4月号

銀河の大気 星間ガスのダイナミズム

R.J. レイノルズ(ウィスコンシン大学)

 天の川銀河は,非常に薄い星間物質と呼ばれる大気に取り囲まれていることが20世紀半ばからわかっていた。星間物質は,まさに何十億個の星々の間に広がっている。これら星間物質は一般に冷たく,星を作る原料として静かに銀河の中を漂っていると思われていた。美しい夜空を見上げてもこういったことにはなかなか気づかないものだ。

 

 しかし,最近になってもっと予想もつかないようなダイナミックな星間物質の様子がわかってきた。星間物質の密度,温度,電離の様子は極めてバラエティーに富んでおり,それらが混然として銀河の中に存在しているのだ。超新星爆発は巨大なバブルを吹き上げる。それらは渦巻腕のある銀河円盤から煙突のように吹き上げられ,再び噴水のように円盤へ戻っていく。極端な場合は,円盤の外へ行ってしまうこともある。このほかにもさまざまな現象がつながって,天の川銀河にある“大気”を通じて地球のある場所からはるか離れた銀河の円盤にまでその影響を及ぼしていく。

 

 実際,地上にある天文台や宇宙望遠鏡は,天の川銀河の大気は惑星の大気にひけを取らないほど複雑で興味深いことを次々と発見している。星々や星間物質の間に働く重力,星からの放射,飛びかう宇宙線,そして磁場。これらが複雑に関連し合い,星間物質は絶えずかき乱されたり暖められたりする。まさにリサイクルされ,色々な相の星間物質へと姿を変えながら進化しているのだ。

著者

Ronald J. Reynolds

ウィスコンシン大学マディソン校天文学教授。小学校6年生のころ,口径11cmの反射望遠鏡を買ってもらい,月の写真を撮ることに熱中した。しかし,当時から天文学に目覚めたわけではなく,天文学者を目指し始めたのは大学に入って天文学の講義を聴き始めてからだった。大学では物理のPh.D.を取得しようとした。現在の研究テーマは天の川銀河の中にある,暖かい電離ガスの性質を解明することだ。この目的のため高感度の分光器を設計・製作した。ウィスコンシンHα探査計画の責任者であり,2年の歳月をかけて北天から見える天の川全域の探査をした。

原題名

The Gas between the Stars(SCIENTIFIC AMERICAN January 2002)