日経サイエンス  2001年5月号

特集:しのび寄る水資源危機

久保田啓介(編集部)

 水資源の危機がしのび寄っている。発展途上国を中心に世界各地で水不足や水質汚染が深刻化し,食糧難や感染症などの原因になっている。世界の科学者や行政担当者らで組織する世界水会議は2000年春,「21世紀に向けた世界水ビジョン」を公表,その中で2025年には世界人口の約40%が深刻な水不足に直面すると警告した。

 

 中国の黄河流域では乾期に下流域が干上がる「断流現象」が毎年のように起こり,農業生産に打撃を与えている。地球の人口は2025年に約80億人に達すると見込まれているが,水不足の影響で必要な食糧を供給できなくなるおそれもでてきた。水利権をめぐる争いは古くから地域紛争の火種になっており,水不足が紛争激化に拍車をかける心配もある。

 

 水資源に比較的恵まれている日本にとっても,世界各地の水不足は対岸の火事ではない。日本は世界有数の農産物輸入国で,国際的な水不足が深刻化すれば食糧などの輸入にも影響が及ぶからだ。地球的な視点に立ち,水が限られた資源であることを認識すべき時がきているのかもしれない。

 

 

世界規模で崩れる需給バランス  P. H. グレイク
節水と食糧増産の両立は可能か  S. ポステル
持続的利用への処方箋  D. マーティンデール/P. H. グレイク
水資源保全と日本の役割  久保田啓介(編集部)