日経サイエンス  2001年5月号

巧みなセールストークを科学する

R. B. チャルディーニ(アリゾナ州立大学)

 ある人が他者から直接的,間接的に影響を受ける過程(社会的影響過程)は,半世紀以上にわたり科学的な研究が行われてきた。本格的な研究は,第二次世界大戦における政府の広報活動や説得プログラムなどに活用するために始まった。それ以来,多くの社会科学者が,他人の態度と行動に影響を与える方法を研究してきた。著者自身も過去30年間,依頼に対して承諾を取りつけるといった行動変化を引き出す要因を,集中的に研究してきた。

 

 人は,基本的に「返報性」「一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」という6つの要素に基づいて行動しようとする傾向がある。これらの要素をうまく使うと,肯定的な返答を引き出せることが多い。 この6つの要素は,商売上の取引や社会的活動への参加,個人的な人間関係を左右するので,これらを使った説得の原理を知っていると有利だ。

著者

Robert B. Cialdini

 アリゾナ州立大学心理学教授,大学理事。米人格社会心理学協会の会長にも選出された。チャルディーニの著作「Influence」(『影響力の武器』社会行動研究会訳,誠信書房,1991年)は,日常の各場面で人が説得される理由を3年間かけて研究した成果が盛り込まれており,版を重ね9カ国語に訳されている。著者によると,人間相互の複雑な影響に長年興味を抱いているのは,どちらかと言えば都会的でない州にあって,歴史的にはドイツ人都市だったミルウォーキー市のポーランド人が大半を占める地区で,生粋のイタリア人家庭に育ったという環境が原因にあるという。

原題名

The Science of Persuasion(SCIENTIFIC AMERICAN February 2001)