日経サイエンス  2000年6月号

生物時計を動かす遺伝子

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M.W. ヤング(ロックフェラー大学遺伝学研究所)

 あらゆる生物の体内では生物時計(体内時計)が24時間ごとの時を刻んでいる。この時計を動かすのは,複数の遺伝子とそれらがつくりだすタンパク質だ。生物時計の基本的な仕組みは,ショウジョウバエでもマウスでもヒトでも,共通している。人間の場合は,生物時計の中心は脳の視交叉上核と呼ばれる部分にあるが,ショウジョウバエでは,脳の細胞だけでなく,羽や足,触覚など,体内のさまざまな場所に時計がある。生物時計の基本的な仕組みは,ショウジョウバエでもマウスでもヒトでも,共通していることがわかった。

 

 著者たちは,実験室内で人工的に時差のある環境を作り出し,ショウジョウバエを移動させることによって,脳の細胞内の時計がどう変化するかを観察した。ショウジョウバエに光を当てると,脳の細胞内にあったPERとTIMというタンパク質からなる複合体が分解し,別のCYCLEとCLOCKというタンパク質の複合体が合成される。これら2種類のタンパク質複合体はそれぞれ他のタンパク質複合体の遺伝子を不活性化させる働きがあり,タンパク質量が情報としてフィードバックされる仕組みになっている。

 

 こうした研究が進めば,睡眠障害や季節性のうつ病の治療にも役立つものと期待されている。(編集部)

 

 

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著者

Michael W.Young

ロックフェラー大学の教授および遺伝学研究所所長。全米科学財団(NSF)の「生物時計科学技術センター」のロックフェラー大学の責任者を務めている。このセンターは複数の研究機関を結ぶ共同組織で,ロックフェラー大学のほか,ブランダイズ大学,ノースウエスタン大学,カリフォルニア州ラホーヤにあるスクリプス研究所,バージニア大学が参加している。
1975年にテキサス大学でPh.D.取得後,遺伝子と染色体の構造を研究するためにスタンフォード大学医学部でポスドクの奨励研究員となった。1978年,ロックフェラー大学に移る。彼の研究グループは,ショウジョウバエの生物時計に関係する7つの遺伝子のうち4つを単離し,その機能を解明した。

原題名

The Tick-Tock of the Biological Clock(Scientific American March 2000)