日経サイエンス  2000年6月号

特集:火星 有人探査のシナリオ

ステップ3 巡回軌道の宇宙船を使う

J. オバーグ(航空宇宙ライター) B. オルドリン(航空宇宙コンサルタント)

 重力を利用した地球と火星の間の軌道を行き来する船は,人間と装置を往復させるコストを低減できる。

 

 両惑星を行き来する居住船のコンセプトは1980年代にさかのぼる。当時サイエンス・アプリケーション・インターナショナル社にいたフリードランダー(AlanL. Friedlander)とニーホフ(John C. Niehoff)は,地球と火星に周期的に近づくような太陽中心軌道に,数機の寿命の長い宇宙居住船からなるシステムを配置することを提案した。惑星間飛行をする人間が,その2年以上の旅をこの居住船で過ごす。そして火星や地球と出合う時には,旅人はもっと頑丈な乗り物(いわば「宇宙タクシー」)を使って,居住船と惑星の間を往復する。居住船は効率は高いが人間にとっては遅すぎるイオン推進のような推進機関を使って物資を補給する。宇宙タクシーによる居住船と惑星との間の旅には,1週間足らずかかる。

 

 もともと考えられていた居住船は,地球と5年ごと,火星と3.75年ごとに出合う太陽中心の軌道を運動する居住船だった。その軌道は惑星と会合しても大きくは変化せず,この初期のコンセプトではスウィングバイは問題にならなかった。

著者

James Oberg / Buzz Aldrin

2人は1981年にコロラド州ボールダーで開かれた第1回「ケース・フォー・マーズ」会議で出会って以来,火星探査の軌道戦略について共同研究をしてきた。オバーグは航空宇宙関係のライターで,コンサルタント。1975年から1997年まで,NASAジョンソン宇宙センターの技術者だった。月面を歩いた2人目の男であるオルドリンは,1970年にNASAの宇宙飛行士隊から退き,米空軍に復帰して,エドワード空軍基地でテスト・パイロット学校を主宰した。現在はカリフォルニア州ラグーナ・ビーチに本拠を置く航空宇宙コンサルタントだ。

原題名

A Bus between the Planets(SCIENTIFIC AMERICAN March 2000)