日経サイエンス  2000年6月号

特集:火星 有人探査のシナリオ 

ステップ1 安上がりな直行便

R. ズブリン(火星協会会長)

 火星有人計画の有力な提唱者である著者は,10年以内に比較的安く火星に宇宙飛行士を送り込む計画を考えている。

 

 アポロの月着陸以来ここ30年の大半を通じて,米国の宇宙開発計画は次に設定すべき目標や一貫した構想に欠けていた。次の目標とすべき答えは実に簡単だ。火星への有人探査と移民だ。

 

 この目標はすでに私たちの手の届くところにある。風変わりな装備をした巨大な宇宙船を建造する必要はない。火星に人類を送り込むのに必要なすべての技術は,今日すでに手に入る。私たちは25年以上も前に月に宇宙飛行士を運んだのと同じロケットを使い,比較的小さな宇宙船を火星に直行させることで火星にたどり着ける。成功のカギは,探検家が地球上で世界各地に冒険をし始めたころの戦略と同じだ。つまり,身軽な旅装と現地調達だ。火星への最初の試験飛行は10年以内にできるだろう。ここで,私の提案した火星直行計画がどんなものか紹介しよう。

 

 いつの日か,何百万もの人々が火星に住むことになるだろう。彼らはどんな言語を話すのだろう。火星から太陽系とさらにその遠くへ移動していく時,彼らが懐かしがる価値や伝統とはどんなものなのだろう。

著者

Robert Zubrin

火星協会の会長で,宇宙開発・探査を研究するパイオニア・アストロノーティクス社の創立者でもある。著書に,TheCase for Mars:The Plan to Settle the Red Planet and WhyWe Must(Simon &Schuster,1996),Entering Space:Creatinga Space-Faring Civilization(Tarcher-Putnam,1999)がある。

原題名

The Mars Direct Plan(SCIENTIFIC AMERICAN March 2000)