日経サイエンス  2000年4月号

ワームホールと負のエネルギー

L. H.フォード(タフツ大学) T. A.ローマン(セントラルコネティカット州立大学)

 離れた場所をつなぐワームホールを造ったり,超光速の宇宙旅行を可能にするワープ推進装置を動かすには,「負のエネルギー」という,はなはだ異常な形態のエネルギーが必要とされる。この負のエネルギーを可能にする物理法則そのものが,同時に負のエネルギーの振る舞いに対して制限を加えてしまうというのは,運が悪いと言うほかないだろう。

 

 空間のある領域に,「無」以下のモノが存在するというようなことが可能だろうか。常識はこれを否定する。なぜなら,あらゆる物質と放射を取り去ってしまえば,残るのは真空だけのはずだから。

 

 ところが量子物理学は直観を混乱させてきたし,今回も例外ではない。空間の一部分が無以下のモノを含むことができるのがわかったのだ。つまり,単位体積当たりのエネルギー,すなわち「エネルギー密度」が負になることがあり得るという。(本文より)

著者

Lawrence H. Ford / Thomas A. Roman

この10年間,2人は負エネルギーに関して共同研究をしてきた。フォードは1974年にプリンストン大学でPh.D.を取り,ホイーラー(John Wheeler)のもとで仕事をした(ホイーラーはブラックホールの名付け親)。彼はブラックホール物理学の創始者の1人である。現在はタフツ大学の物理学教授で,一般相対論と量子力学の両方の分野で研究をしているが,とくに量子ゆらぎに関心をもっている。趣味はニューイングランドの森林を歩き回り野生のキノコを採集すること。ローマンは,1981年にベルグマン(Peter Bergmann)のもとでシラキュース大学からPh.D.を受けた(ベルグマンは統一場の理論に関してアインシュタインと共同研究をしていた)。彼はこの10年間というものタフツ宇宙論研究所を足繁く訪問してきた。現在は,セントラルコネティカット州立大学の物理学教授である。彼の関心は重力の量子理論に対する負エネルギーの意味だ。彼は野生のキノコからは距離を置いている。

原題名

Negative Energy, Wormholes, and Warp Drive(SCIENTIFIC AMERICAN January 2000)