日経サイエンス  2000年4月号

特集:リニアモーターカーの行方

21世紀の交通インフラの条件

中島林彦(編集部)

 リニアモーターカー営業線の本命は東京,名古屋,大阪の3大都市圏を結ぶ新たな大動脈「リニア中央新幹線」だ。ただ,現在の日本は約10年に及ぶ景気低迷を経て,前途にようやく明るさが見えてきた段階。総額10兆円ともいわれる巨大プロジェクトを推進しようという熱気は感じられない。

 

 しかし,目先はともかく10年~20年先を考えると,リニアモーターカーの登場は,そう夢物語ではない。東海道新幹線が20世紀後半の高度成長を支える社会基盤となったように,リニア中央新幹線が21世紀の日本の新たな飛躍のためのインフラとして,大きな役割を担う可能性は十分ある。

 

 バブル経済が過熱した1980年代後半,東海道新幹線の輸送量は急伸し,21世紀初頭にはパンクするとまで考えられるようになった。そこで国は1989年,中央新幹線の整備を念頭に山梨リニア実験線の建設を決定した。実現に向かって動き出した中央新幹線をめぐって,沿線の9都道府県は激しいルート誘致合戦を繰り広げた。

 

 結局,バブルは1991年に破裂,東海道新幹線の輸送量は頭打ちになり,中央新幹線フィーバーも霧散した。しかし,深刻化する地球温暖化問題やIT(情報技術)革命の勃発,阪神淡路大震災など,その後の10年間の内外の激動を考えると,21世紀のリニア中央新幹線の意義は,ますます重みを増していると考えることができる。