日経サイエンス  2000年3月号

視覚から意識の世界をのぞく

N. K. ロゴセティス(マックス・プランク生物工学研究所)

 だまし絵のような2通りに解釈できる絵は,一方の解釈で見ているときには,もう一方の解釈の絵は見えない。2つの解釈が入れ替わるときに,脳の中ではいったい何が起きるのだろうか。

 

 著者たちが研究しているのは,2つの異なる視覚パターンがそれぞれの目に同時に提示されたときに起きる,「両眼視野闘争」という現象に導く多義性だ。人間は,片眼ずつに違うパターンを見せられると,その脳は,最初に一方の知覚を,そしてそれからもう一方の知覚を,といった具合にゆっくりと交互に意識を向ける。

 

 実験室でこの効果を生み出すために,私たちは立体鏡を使った。訓練されたサルは,このような視覚刺激を見せられると,2~3秒ごとに変化する知覚を体験していることをレバー押しなどで報告する。私たちの実験で,このような変化を報告しているとき,これに対応する神経活動を明らかにすることが可能になった。

著者

Nikos K. Logothetis

ドイツのチュービンゲンにあるマックス・プランク生物工学研究所の認識過程生理学部長。1984年にミュンヘンにあるルードウィッヒ・マクシミリアム大学からヒトの神経生物学でPh. D. を取得。1985年からマサチューセッツ工科大学(MIT)でポスドク研究員(後に研究員)として脳と認知を研究する。1990年より,ベイラー医科大学の神経科学に移り,本文で紹介した研究を指揮する。1997年にドイツに戻った。

原題名

Vision: A Window on Consciousness(SCIENTIFIC AMERICAN November 1999)