日経サイエンス  2000年3月号

理科教育の危機は本当か

W. W. ギブス(Scientific American 編集部) D. フォックス(サイエンスライター)

 1995年に実施された第3次国際数学・理科教育調査(TIMSS)で,米国の高校生の得点は国際平均に満たなかった。これをきっかけに,米国では科学教育危機論が高まってきた。

 

 さまざまな調査結果を見ると,米国の成人の科学知識が他国より劣っているというデータはなく,危機論の中身は必ずしも当たってはいない。著者らは,教育危機論は10年ごとに繰り返される儀式のようなものとし,TIMSSでの成績がよくなかった最大の理由として,米国の高校生が学ぶ理科の内容が広く浅いため,どの問題でも平均して低い点数しかとれなかったと分析している。

 

 TIMSSは本来,異なる文化や経済的背景を持つ国の間で,教育制度や教育の内容が適切に機能しているかどうかを知るための指標で,テストの得点を競うものではない。米国では教科書,カリキュラム,授業の進め方など,さまざまな側面から科学教育の内容を問う議論が盛んになっている。(編集部)

著者

W. Wayt Gibbs / Douglas Fox

ギブスはサイエンティフィック・アメリカン誌のシニアライター。フォックスはフリーのサイエンスライター。この記事の拡張版はインターネットのhttp://www.sciam.com/1999/1099issue/1099gibbs.html/で紹介されている。2人ともサンフランシスコ在住。

原題名

The False Crisis in Science Education(SCIENTIFIC AMERICAN October 1999)