日経サイエンス  2000年3月号

エネルギー資源開発の道を模索する日本

中島林彦(編集部)

 昨年11月,静岡県御前崎の南西60km沖の太平洋上に25階建てビルに相当する高さ約75mもの巨大な掘削櫓(やぐら)が姿を現した。世界最大級の深海掘削リグ「M. G. ヒューム Jr.」(約2万4000トン)だ。岩を砕く頑丈な刃を付けた鋼管を水深約1000mの深海底まで下ろし,海底下約2000mまで掘る。

 

 掘削は2月まで続くが,メタンハイドレートが存在すると考えられる海底下約300mの海底疑似反射面までの堆積層は,12月2日までに掘り抜いた。引き上げられた堆積層のサンプル容器を開けると,水を含んだ灰色の砂が姿を見せた。砂からはブクブクと多数のメタンガスの気泡が発生した。

 

 これまでハイドレート層の学術探査は何回か実施されているが,陸に近い海域で資源開発を念頭にした大規模な掘削調査は世界でも初めて。各国も注目している。深さごとのメタンの含有量などの詳細な調査結果は3月末にもまとまる。

 

 石油・天然ガス資源に乏しい日本にとって,メタンハイドレートは200カイリ経済水域内に眠る貴重な未利用エネルギー資源だ。地質調査所の佐藤幹夫(さとう・みきお)主任研究官らの推定によると,こうした日本近海に眠るハイドレート層で,将来,資源開発が可能とみられるメタン総量は7兆4000億m3。これは国内の天然ガス消費量の約140年分になる。ハイドレート層のエネルギー資源開発の研究では,日本が最も熱心だ。